安部“王子”隆雄

 うじきつよし率いる「Kodomo Band」の初期ベーシストにして、その後、バービーボーイズ、さらには、PSY’Sのライブで活躍し、安藤英樹、大沢誉志幸などのアレンジを手がけた王子さん・・

 10年来の知りあいだが、その王子さんと「バンドビルダー」の構想を話していたおり「プロデューサー」論になったことがある。

 王子 「・・・僕は以前から、“プロデューサー”というものは、あくまで、当のアーティストがよくわからない分野のことだけを行う・・あるいはそのレコーディングに絶対必要だが足りない人材があれば適任のスタッフを探す・・・そういう役割を担う人のことだと考えていました。アレックス・サドキン(デュラン・デュラン、シンプリーレッド、フォリナーなどのプロデューサー)にしろナイル・ロジャース(同じくデュラン・デュランのプロデュース・エンジニア)にしろ、ブライアン・イーノにしろ、やっていることは、そういうレコーディングに欠かせない必要最小限の役割の部分でした。もちろん、かれらも曲を書くとか、アレンジするとか、そういうこともできるわけだけど、その部分こそ、アーティスト本人の責任に帰せられるところだから、よっぽど音楽に対する見解が一致しなければ、なかなか難しいところだと思います。
 でも、日本ではそういう人をプロデューサーとは言わないですよね?」

 「・・・そうね・・日本では、アレンジもし、曲も書き、楽器も弾き、なにもかもいっさいがっさいやる人・・そういう人をプロデューサーと言ってるね。
 王子の言ってる、そういう仕事をする人・・バンドビルダーの譬えでいえば、レコーディングビルダー・・とでも言えばいいのかなぁ。
 そういう存在って、ホントはいま、いちばん必要とされているのかも知れないな」

 王子 「別に呼び名にはこだわらないけど、僕はレコーディングがうまくいかない人たちの手助けがしたいですね。」
 幾多の伝説的バンドのメンバーとしてライブやレコーディングを経験してきた人ならではのコメントである。

 安部王子は、村松邦男と幾度も仕事をしているが、両者の接点には、そんなバンド演奏やレコーディングにおける出しゃばらない“ビルディング”職人の気質が呼応しているのだろう。
 村松邦男ともども、ビルダーとしてお勧めする。