バンドビルダーとは

 クラシック好きの方なら、「オーケストラビルダー」という言葉をお聞きになったことがあるかもしれません。
 オーケストラに指揮者は欠かせません。古くはトスカニーニ、フルトヴェングラー、ブルーノ・ワルター…新しいところでは、ウェストサイドストーリーの作曲者としても有名な、レナード・バーンスタイン、数年前、「アダージョ・カラヤン」なる元祖癒し系クラシックCDをたくさん売ったヘルベルト・フォン・カラヤン、(この二人は新しいといってももう亡くなってますが)・・さきのニューイヤーコンサートで名門ウィーンフィルをふった小澤征爾などなど・・
 これらの指揮者は巨匠とか、マエストロとか呼ばれています。
 じつは名指揮者の中に、「彼は「マエストロ」というよりは、むしろ「オーケストラビルダー」として優秀だった」なんていう評価を得ているひとが何人かいます。

 オーケストラビルダー?オーケストラをBUILD(ビルド)する、とは一体何か?
 この場合のBUILDはむしろボディビルのビルドと一緒と考えたほうがいいでしょう。つまり、建設するとか建築するという意味合いより、鍛える、鍛錬するというニュアンスです。
 通常、オケのメンバーは100人以上になります。それだけの人数がいて、かつプライドも人一倍のメンバー集団を統一して、一糸乱れぬ音楽を表現しなければならないオーケストラ……一筋縄ではいきません。
 優秀なオーケストラビルダーは、これらを統率する術を心得ていて、自分が指揮するときだけではなく、他のどんな指揮者の要望にも応え、またベートーベンやモーツァルトはもちろんこと、バロックから現代音楽まであらゆるレパートリーの音楽に対して常に一定の音が出せるようにオーケストラのメンバーを訓練しているのです。

 そのためには、まず、耳がよくなくてはなりません。一斉に鳴る100人以上の楽器のうち、どれがズレているかを一瞬にしてききわけなければ話になりません。また、音のズレだけを指摘するだけではダメです。演奏のニュアンスや奏法なども指摘しなければなりません。なぜ、その奏法がここではだめなのか、作曲者の意図や譜面の読み方、解釈を説明しなければならない。それらを言語化して納得させる必要があります。また、個性豊かなメンバーに思うとおりの演奏をさせるには、尊敬を集める必要もあるでしょう。
 それらのわざにたけている指揮者を「オーケストラビルダー」と呼んで特別にリスペクトしているのです。
 さきのカラヤンはあるとき、海外公演から帰ってきてひさしぶりに手兵のベルリンフィルをリハーサルしていて、「今日のオケは格別よく鳴るなぁ。先週の客演指揮者は一体誰だったのかね?」とたずねました。メンバーが「バーンスタイン先生です」と答えました。するとカラヤン、一言も言葉を発せず、その後バーンスタインには一切ベルリンフィルをふらせませんでした。嫉妬深いカラヤンは、自らの最大のライバルであるバーンスタインが「オーケストラビルダー」としても優秀であることを許せなかったのです。
 ヴァイオリンの先生、ピアノの先生、オペラ(アリア)の先生などはたくさん存在します。しかし、それらを束ねて、俯瞰しつつ鍛錬する“ビルダー”は古来少なかったのです。

ひるがえって、いまの音楽業界。とくにバンド…
なんだか一昔前より色々な意味でレベルが下がっていませんか…
技術的にも、精神的にも・・

今までもヴォイストレーナーや各楽器のトレーナーは数多くいました。
でもバンド全体のレベルアップを手伝うような存在は皆無でした。
そうです、バンドビルダーは総合的なバンドのトレーナーなのです。

バンドビルダ−はあらゆる角度からバンドを検討します。
問題点は様々です。
純粋な音楽的要因以外に、音楽や音楽業界にたいする考え方、メンバー間やメンバー対スタッフの人間関係、
ストレスや葛藤、あるいは経済状態が原因だったりもします。
メンバー及びスタッフと共にこれらの問題を話し合い、整理し、優先順位を決め、処方を考えます。

ここで大切なのは、バンドのあるべき姿を統一し全員が理解、納得、賛同することです。
それにより苦手な箇所を集中的にトレーニング、克服し、地道かつ確実にスキルアップしてゆく、といった方法や、
あるいは短所には目をつぶり、ひたすら魅力のある部分を伸ばしてゆく、といった方法も考えられます。

バンドビルダ−はプロデューサーやアレンジャーの領域を侵しません。
あくまでもバンド全体のレベルアップを手伝う事を目的としています。


プロデュースやアレンジ領域には決して踏み込まないバンドビルダーは、
ゴルフにたとえれば、自らはプレイせず、選手のコーチに徹するティーチングプロ、
たとえば、タイガー・ウッズにおける、ブッチ・ハーモン、
パク・セリにおけるレッドベターにたとえられるでしょう。

現在のバンドの音に不満をお持ちの方、
不満はないけどバンド全体を1ランクアップしたい方、
そんな状況にバンドビルダーが最適です。